ジャパンウールプロジェクト

ジャパンウールプロジェクトチラシ

日本の羊毛を使って
日本の工場で糸にして織った
日本のツイードが作りたい

羊の文化は約1万年前に始まり世界各地に伝播しました。それに日本が仲間入りして百年余り、1957年に約100万頭を数えた羊も、2017年には約17,000頭しかいません。その羊肉も確かな流通があるわけではなく、牧場ごとに営業しているのが現状です。羊毛はさらに厳しく、多くは廃棄されているようです。なぜなら採毛量が少ないこと、何より洗毛工場が1998年に閉鎖され加工の道が途絶えたことがその理由です。

さて2011年より私は「国産羊毛コンテスト」を毎年6月に開催しています。牧場自慢のフリースを送ってもらい、審査をしてトップのフリースには金銀銅の盾とロゼットを進呈するというものです。コンテストにやってくるフリースは、それはそれは素晴らしく、世界のどこに出しても恥ずかしくない美しいフリースです。しかし…それはほんの上位数%の最高品質のフリースであり、それらはスピナーに流通しているにすぎません。残り90%余りの羊毛の行き先が無いというのが現状です。

日本の羊の主たる品種はサフォークとコリデールで、その羊毛は中番手でふくらみのあるツイードやニットに最適の毛質です。私は原毛屋になって以来、ハードルは多々あるけれど、この毛を生かして日本のツイードが作れないものかしら…と、ずっと思い続けてきました。

織物会社社長 伊藤核太郎

さて2年前、私は愛知県一宮の織物会社、中外国島の伊藤核太郎さんと出会い、国産羊毛で服地が作れないかという話がはじまりました。「うちの社員が『これは私は羊の毛刈りを手伝って、羊毛を仕分けして出来た服地です!』と自慢しながら売るような、そんな物作りがしたい!」という彼の言葉に共振し、一緒に動き始めました。

毛刈り職人 山本雪

そして今年4月、毛刈り職人の山本雪さんが加わり、織物会社社長の伊藤核太郎さんとウールクラッサーの私・本出ますみで「ジャパンウールプロジェクト」を立ち上げました。毛刈りや羊毛の仕分けの講習会をしたり、「国産羊毛コンテスト」で羊毛の目合わせをしたりして、糸に出来る品質の羊毛であれば買い取る、というのが手始めです。

ウールクラッサー 本出ますみ

2020年6月、愛知県一宮に集まってきた国産羊毛を、染色工場で洗ってもらい、大阪泉大津で紡績してもらい、そして9月段階で織物工場で織の工程に入っています。まもなく国産羊毛で作った服地が出来上がります。

今後は服地だけでなく、セーター、ブランケット、靴下など、国産羊毛の特長-膨らみとコシ―を生かした物ツクリの流れが出来ていくとこを目指しています。

それには牧場も、メーカーも、自分のことだけを考えていたのでは国産羊毛を無駄なく使うという循環型の物作りの継続はできません。今までの「企業秘密」という言葉が象徴するように、1企業の営利のみを追求するというのでは、循環型の経済は成り立たないのだと思います。

情報開示と機会均等。とても難しいことですが、それを目指して国産羊毛の活用を考えていきたいと思っています。   

               2020年9月14日 ウールクラッサー本出ますみ


(2020年10月20日追記)
完成した服地を中外国島のオンラインショップで販売しています。
北海道ウールツィード

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