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紡績糸のための羊毛の扱い―スカーティングの手順と準備物

JWP協議会

2022年2月吉日

紡績糸のための羊毛の扱い―スカーティングの手順と準備物

Wool Classer 本出ますみ

良い糸を作るには、最初の毛刈り、そのあとすぐにスカーティングすることが大切です。
毛刈り後そのまま袋に入れてしまいますと、きれいな部分とゴミの入った部分が一緒になって、ゴミが全体に混じり、最後の工程まで残ります。工場の段階で手間も時間もかかり、機械を痛める原因にもなり、ひいては製品の質と価格にも影響します。

ここでは手間をかけずに、ダメージのある部分を取っていくポイントをご紹介します。

■手順-毛刈りをしたらすぐにスカーティングできる環境を作ろう

  1. 毛刈り時に、ベリー(お腹の毛)は最初にはずす。糞がぶら下がっていたらはずす。
  2. 毛刈り後すぐに、フリースはすのこ状のスカーティング台にのせる。
  3. 広げて全体を見て、毛の状態を把握して、どこを取り除くかを見る。
    全体にゴミの多いフリースは、スカーティング作業しないで裾物クラスにする。
  4. 取り除くべきところは、藁ゴミの混入しているところ、糞がぶら下がっているところ、背筋の細かいゴミが入っているところ。黄ばみがひどいところ、フェルト化がひどく解毛に手間がかかるところです。
  5. 裾物を取り終わったらローリングしてランク分けして、その場で出荷先を決めます。
    →糸にできる良質のフリースは、スピナー用(1頭単位)、JWPに送る紡績用。
    →裾物は堆肥等。

「毛刈り」は羊毛を糸にするための技術です。「スカーティング」は糸に加工するために必要な作業。そして「格付け」は用途に合わせ適材適所に販売するためのものです。
→梳毛なら繊維長が8㎝必要で、サウンドネス(張力)のある品質である事
→紡毛なら短くても、少しテンダーでも可。

 
■スカーティング時の準備物

①スカーティングテーブル。

上記のテーブルは約120㎝角の木製すのこを2枚置いてます。
サイズに決まりはありませんが、フリース1枚が載るだけの大きさ(畳1枚以上)で、1人で作業ができるように、反対側に手が届くくらいの大きさが適当です。
会議用の机と金網のネット状のフェンスなどで代用してもいいでしょう。(後述)
すのこ状にする理由は、セカンドカッツ等短い毛や、ゴミや土砂が落とせるからです。

②4㎏以上測れるハカリ。

羊1頭から採れる羊毛は、だいたい2㎏~4㎏くらいありますので、データを取るのなら最低4㎏ハカリは必要です。
羊毛の重量は、一宮の(株)国島さんで到着時に計測いたしますが、できれば牧場段階でも羊毛の重量を測ってください。測れない場合は、一宮についてから(株)国島で総重量を計測します。

③裾物を入れるための袋→

飼料袋など4枚。スカーティングテーブルの四隅にセット。

④スカーティングした羊毛を入れる袋

JWPからお送りしたフレコンバッグは、ギューギューにつめれば約70~80㎏くらい入ります。輸送料のことを考えればできるだけたくさん入れてください。
この段階で、どこに発送するか、グループ分けをします。
Aクラス…スピナークラス、特に美しいフリースは国産羊毛コンクールに是非出品してください。(後日またご案内します)
Bクラス…平均的なフリース。JWPに出品する。
Cクラス…取り除いた裾物など、ゴミが多い、もしくは黄ばみなどダメージが激しく、糸にはできないクラス。この毛は堆肥と考えます。
以上のように、大きくはABCの3つのクラスに分けられます。

⑤ほうきとチリトリ、毛刈りの環境は常に美しく保ちましょう。

毛刈りやスカーティングの場所は、フリースに土砂が混入しないように、コンクリート等、直接の地面でない方がよいです。毛刈りの場所は下にベニヤを敷くのでもかまいません。
⑥羊毛を入れる袋

スピナークラスなど1頭単位で管理したい場合は、シーツなどの綿布や、ビニール袋、飼料袋を用意しておきます。

⑦筆記用具

表示するための紙やマジック等。

■簡易のスカーティングテーブル
会議用机2台を間隔空けて置き、その上に園芸用のフェンス等、すのこ状の物を置く。

あるもので工夫してください。
ベニヤ板は羊毛が引っ掛かるので、作業しにくくなります。
まずはフリースが落ちない程度に穴が開いていて、手を怪我しないような物を考えてください。

日本の風土に育まれた健康な羊の毛が、生かされることを目指したいと思います。